家庭用ゲーム機 技術資料室

Console Hardware Archiveest. 2024

特集

CPUで読む世代交代6502・Z80・68000、そしてRISCへ

家庭用ゲーム機の世代は、しばしばビット数で語られる。だが実際に起きていたのは「どのCPUファミリーを選ぶか」という、もっと生々しい調達の話だった。

6502系 ― 安さで選ばれ、速度で延命した

ファミリーコンピュータのRP2A03は、MOS 6502のカスタム版である。6502は1975年に登場した8bit CPUで、1980年代前半にはすでに枯れた設計だった。Apple II、コモドール64、BBC Microに搭載され、量産効果で単価が下がりきっていた。

任天堂がこれを選んだ理由は明快で、安かったからである。さらに音源回路を同じダイに載せることで、サウンドLSIの分のコストも削っている。

興味深いのは、6502系がこのあと2度延命される点である。1987年のPCエンジンは65C02のカスタム版HuC6280を7.16MHz——ファミコンの4倍のクロック——で駆動した。1990年のスーパーファミコンは16bit拡張版の65C816をベースにした5A22を採用している。8bit時代の安いCPUが、命令セットの互換を保ったまま16bit世代まで引っ張られた。

Z80系 ― パソコンの部品箱から

セガのSG-1000とセガ・マークIIIはZ80Aを採用した。同社が並行して開発していた8bitパソコンSC-3000と部品を共有するためである。

Z80はこの時代、ホビーパソコンの事実上の標準だった。周辺LSI(TMS9918AのVDP、SN76489の音源)まで含めて「組み合わせれば動く」セットが確立しており、設計工数を大幅に削減できる。

任天堂のゲームボーイも、シャープLR35902というZ80/8080派生のコアを積んでいる。ただしこちらはZ80そのものではなく、必要な命令だけを残した縮小版である。ライセンス費用と消費電力の両面からの判断とみられる。

メガドライブに至っては、メインCPUが68000でありながらサブCPUとしてZ80Aを残した。音源制御と、マークIII互換モードのためである。旧世代のCPUを互換のために基板に残す手法は、のちのPlayStation 2(初代PSのCPUをIOPとして流用)と同じ発想にある。

68000系 ― アーケードからの流入

1988年のメガドライブ、1990年のネオジオ。どちらもモトローラMC68000を採用している。この選択の背景にあるのは、両社がアーケード基板で68000を使い込んでいたという事実である。

セガのシステム16、SNKのMVS。業務用の開発資産——ライブラリ、開発ツール、そして何よりプログラマの経験——がそのまま家庭用へ移せる。移植コストの削減効果は、CPU単価の差を上回る。

68000は16/32bitの中間的な設計で、内部32bit・外部データバス16bitという構成を取る。「16bit機」という当時の呼称は、この外部バス幅に由来する。

RISCへの転換 ― 1994年

1994年に発売された3機種は、いずれもRISC系CPUを採用している。3DOはARM60、セガサターンは日立SH-2、PlayStationはMIPS R3000A系。CISCからRISCへの切り替えが、この1年に集中した。

背景にあるのは3Dポリゴン処理の要求である。座標変換は積和演算の繰り返しであり、単純な命令を高速に回すRISCの性格に適合する。加えて、いずれの機体も座標変換専用の回路を別に持つ(PlayStationのGTE、サターンのSCU-DSP)。CPUが汎用処理、専用回路が3D演算という分業が、この世代で確立した。

1996年のNINTENDO64はMIPS R4300i系を93.75MHz、1998年のドリームキャストは日立SH-4を200MHz、2000年のPlayStation 2はMIPS系のEmotion Engineを294.912MHzで駆動する。1983年のファミコンが1.79MHzだったことを考えると、17年で約165倍である。

メインCPU 動作クロック(対数目盛・MHz) 1 3 10 30 100 300 カセットビジョン 1 MHz ファミリーコンピュータ 1.79 MHz SG-1000 3.58 MHz セガ・マークIII 3.58 MHz PCエンジン 7.16 MHz メガドライブ 7.67 MHz ゲームボーイ 4.19 MHz ネオジオ 12 MHz スーパーファミコン 3.58 MHz 3DO REAL 12.5 MHz セガサターン 28.6 MHz PlayStation 33.87 MHz NINTENDO64 93.75 MHz ドリームキャスト 200 MHz ワンダースワン 3.072 MHz PlayStation 2 294.912 MHz ※ 複数CPU搭載機はメインCPUのクロックを採用。カセットビジョンはカートリッジ側CPUの概算値。

図 メインCPUの動作クロック比較。当資料室で作成。

クロック周波数だけでは測れないもの

下の図はメインCPUの動作クロックを対数目盛で並べたものだが、この数字が性能を表さない場面は多い。

スーパーファミコンは3.58MHz、同世代のメガドライブは7.67MHz。数字は倍以上違うが、実際の画面表現でスーパーファミコンが劣っているとは言えない。映像処理をS-PPU、音声処理をSPC700に完全に切り出しているためである。

3DO REALのARM60は12.5MHz。同年のPlayStation(33.87MHz)の3分の1だが、描画はCELエンジン2基が担当する。ボトルネックはCPUクロックではなく、ジオメトリ演算の処理系にあった。

「何MHzか」ではなく「何をCPUにやらせないか」。1980年代から2000年にかけての家庭用ゲーム機の設計は、一貫してこの問いへの回答だったとも読める。

関連する機種ページ

図版について

本ページのグラフはすべて当資料室で作成したものです。元になった数値の出典は各機種のページに記載しています。

最終更新:2026-07-05