家庭用ゲーム機 技術資料室

Console Hardware Archiveest. 2024

32/64bit世代(1994–1996) / 松下電器産業(規格:The 3DO Company)

3DO REAL3DO REAL (FZ-1)

ハードを自社で作らず規格だけを売る。家庭用ゲーム機でこの方式を本格的に試した、ほぼ唯一の例。

松下電器 3DO REAL(FZ-1)本体とコントローラ
3DO REAL(松下電器産業(規格:The 3DO Company)/1994年3月20日)
撮影:Evan-Amos / 出典:Wikimedia Commons / CC BY-SA 3.0

基本情報

発売日1994年3月20日
発売元松下電器産業(規格:The 3DO Company)
型番FZ-1
発売時価格54,800円
ソフト媒体CD-ROM(2倍速)
同時発色数1,677万色
出荷台数非公表(全世界 約200万台とする推計あり)

メーカー公表値なし。

システム構成

媒体 / MEDIA CD-ROM 2倍速 約640MB フォトCD再生対応 CPU ARM60 32bit RISC 12.5MHz クロックは低め サブプロセッサ カスタムCELエンジン×2 台形変形テクスチャ描画 描画は専用回路が担当 SYSTEM BUS 映像 / VIDEO Video DSP 320×240 / 640×480 1,677万色 メモリ / MEMORY DRAM 2MB VRAM 1MB 音源 / SOUND Audio DSP 16bit ステレオ CD-DA再生 入出力 / I-O コントローラ(デイジーチェーン) 最大8台まで数珠つなぎ 拡張バス(FMVカード) FIG. 3DO REAL (FZ-1) — SYSTEM DIAGRAM

図1 3DO REAL のシステム構成。当資料室で作成。

主要諸元

CPUARM60(32bit RISC)12.5MHz
描画カスタムCELエンジン×2(スプライトの台形変形によるテクスチャ描画)
映像DSPVideo DSP/解像度 320×240・640×480
発色数1,677万色
メモリDRAM 2MB/VRAM 1MB
音源16bit ステレオ Audio DSP
媒体CD-ROM(2倍速)
規格The 3DO Company がライセンス供与/複数社が製造

規格を売るという方式

3DOは、開発元のThe 3DO Company自身がハードウェアを製造しない。仕様をライセンスし、家電メーカーが各社の設計で製品化する。パソコンのアーキテクチャに近いモデルを家庭用ゲーム機に持ち込んだ試みである。

国内では松下電器産業が「3DO REAL」(FZ-1)を、三洋電機が「3DO TRY」を製造した。海外ではGoldStar(韓国)がライセンス生産している。ソフトはどの機体でも動作する。

この方式には、ハードメーカーがソフトのロイヤリティで本体価格を補填できないという構造的な問題がある。ゲーム機の一般的なビジネスモデル——本体を原価付近で売り、ソフトで回収する——が成り立たない。54,800円という価格の背景にはこの事情がある。

ポリゴンではなくCEL

描画を担当するのはCELエンジン2基。「CEL」はスプライトに相当する矩形の画像で、これを台形に変形させて画面に貼りつける。頂点を4点指定して任意の四角形に歪められるため、擬似的な3D表現が可能になる。

ポリゴンを三角形で扱う後年の手法とは発想が異なり、2Dスプライトの延長線上に3Dを置いた設計といえる。テクスチャ付きの面を高速に貼れる一方、ジオメトリ演算はARM60が担当するため、頂点数が増えると急速に重くなる。

CPUクロック12.5MHzという数字だけを見ると同年のPlayStation(33.87MHz)に大きく劣るが、実際の画面性能の差はそこまで単純ではない。とはいえ座標変換専用回路(GTE)を持つPlayStationとの差は、ポリゴン数の多いソフトほど明確に出た。

1994年という年

3DO REAL発売は1994年3月20日。同年11月22日にセガサターン(44,800円)、12月3日にPlayStation(39,800円)が続く。9か月のうちに、より安く、3D性能で上回る機体が2つ現れたことになる。

松下は同年12月に廉価版のFZ-10(44,800円)を投入し、さらに1995年には価格を引き下げるが、市場の主導権は取れなかった。

後継として32bit機「M2」が開発され、1995年には動作デモも公開されたが、家庭用機としては発売に至っていない。技術は松下へ売却され、一部は業務用基板やセットトップボックスに転用された。

派生モデル・周辺機器

1994年10月
3DO TRY(三洋電機/54,800円)
1994年12月
3DO REAL II(FZ-10/44,800円)― 小型化・低価格化
1994年
MPEG-1 FMVカード ― Video CD再生用の拡張カード

参考にした資料

  • 松下電器産業 3DO REAL 取扱説明書
  • The 3DO Company 開発者向け技術資料

画像出典

  • 「松下電器 3DO REAL(FZ-1)本体とコントローラ」 撮影:Evan-Amos / 出典:Wikimedia Commons / ライセンス:CC BY-SA 3.0

システム構成図および各種グラフは当資料室で作成したものです。

最終更新:2025-09-07