黎明期(1981–1982) / エポック社
カセットビジョンCassette Vision
本体にCPUを持たず、カートリッジ側にCPUとROMを載せる。ファミコン以前の国内市場で最も普及した家庭用機は、いま見ても異様な設計思想の上に立っている。
撮影:Evan-Amos / 出典:Wikimedia Commons / CC BY-SA 3.0
基本情報
| 発売日 | 1981年7月30日 |
|---|---|
| 発売元 | エポック社 |
| 型番 | ― |
| 発売時価格 | 13,500円 |
| ソフト媒体 | 専用ROMカートリッジ(CPU内蔵) |
| 同時発色数 | 数色 |
| 出荷台数 | 約45万台(国内・推計) |
国内約45万台とされる。公表値ではない。
システム構成
図1 カセットビジョン のシステム構成。当資料室で作成。
主要諸元
| CPU | NEC μPD777系 4bitワンチップマイコン(本体ではなくカートリッジ側に搭載) |
|---|---|
| 映像 | 専用表示回路。解像度・発色数ともカートリッジ側LSIの仕様に依存 |
| 音源 | 単音のビープ系。効果音のみ |
| メモリ | 本体側にワークRAMを持たない構成 |
| 媒体 | 専用ROMカートリッジ/全11タイトル |
| 入力 | 本体一体型。レバー2本+ダイヤル2個+ボタン |
| 映像出力 | RF(アンテナ端子接続) |
| 電源 | ACアダプタ/単1形乾電池×4 |
本体にCPUがない
カセットビジョンの設計上の特徴は一点に尽きる。本体側にCPUを置かず、ゲームカートリッジの側にCPUとROMをまとめて載せた。本体に残っているのは表示回路、入力装置、電源だけである。
この構成の狙いは本体価格の圧縮にあった。13,500円という値付けは、同時期に国内で流通していた海外製の家庭用機と比べて明確に安い。一方でソフト1本ごとにマイコンを載せることになるため、カートリッジの単価は上がる。本体で稼がずソフトで稼ぐという、後の家庭用機に共通する構図とは逆の設計判断である。
副次的な効果として、ソフトごとに映像表示能力そのものが変わるという性質が生まれた。ハードウェアの仕様を一枚の表にまとめられないのはこのためで、本ページの諸元表に空欄が多いのも同じ理由による。
コントローラが本体に生えている
入力装置は本体一体型で、天面の左右にレバーが1本ずつ、その外側にダイヤル(パドル)が1個ずつ並ぶ。ダイヤルはブロック崩し系、レバーはアクション系という想定で、1台のハードで両方の操作系を扱おうとした結果である。
取り外せないため、2人で遊ぶときは本体をはさんで並んで座ることになる。当時の広告写真がいずれも兄弟が肩を寄せ合う構図なのは、そういう物理的な制約の反映でもある。
その後
1981年から1984年にかけて11タイトルが発売された。累計出荷は約45万台とされ、ファミリーコンピュータ登場前の国内家庭用機としては最大の普及規模だったと見られている。
1984年、上位機「スーパーカセットビジョン」が発売。CPUをNEC μPD7801Gに変更し、本体側に処理能力を持たせる一般的な構成へ移行した。同年の家庭用機市場はすでにファミコンが押さえており、カセットビジョン系列はここで役割を終える。
派生モデル・周辺機器
- 1983年
- カセットビジョンJr.(5,000円)― 廉価版。ダイヤルを省略しレバーのみに簡略化
- 1984年
- スーパーカセットビジョン(14,800円)― CPUを本体側に移した後継機
参考にした資料
- エポック社製品カタログ(1981–1984)
- 『TVゲーム機の歴史』各種年表資料
画像出典
- 「エポック社 カセットビジョン本体」 撮影:Evan-Amos / 出典:Wikimedia Commons / ライセンス:CC BY-SA 3.0
システム構成図および各種グラフは当資料室で作成したものです。
最終更新:2024-06-02